Woman's Voice

Sachiko Ai

取締役 常務執行役員(CAO:監査担当)
1989年入社/法学部出身

Career

1989年丸の内支店配属。法人担当営業などを経て1998年に総合企画部へ。2003年に出産・育児休業を取得後、2004年に経営企画部に課長として復職。2005年に新設されたフロンティア戦略企画部に異動。2008年同部環境室室長、2013年同部副部長に就任。2015年に法人コンサルティング部長、16年に同執行役員就任。2019年監査部長を経て2021年、当社初の女性取締役として常務取締役(CAO:監査担当)に就任。

Interview 01

1989年の入社当時、
女性にとってのビジネス環境はどのようなものでしたか?

1985年に男女雇用機会均等法が制定されて4年、私が入社した頃は企業にもその理念がある程度浸透し、女性活躍の萌芽が見られていました。当社は女性総合職採用に当時から積極的で、私の同期にも10人以上の女性総合職が採用されています。

私も入社2年目に、当時としては珍しい法人営業を担当させてもらいました。アサインされたときは周囲も驚いていましたね。前任者から50社ほどのお客様を引き継いだのですが、女性の担当なんて他行にはいませんでしたから、すぐに顔は覚えてもらえます。でも、笑顔で名刺交換しつつ、その顔には「なんで女性なの?」とはっきり書いてありました。ある企業のご担当者様は、私が異動のご挨拶に伺ったとき「一度も相さんを応接室にお通ししませんでした。すいません」と謝られたりもしました。女性営業担当をどう扱えばいいかわからなかったのだそうです。当時はそのような感じで、女性の社会進出への共通理解が十分に得られていた訳ではありませんでした。

しかし、会社が当時珍しかった女性を法人担当者としてアサインし、チャンスを与えてくれたことに感謝しています。法人営業で経験を積み、自分なりに成功体験を得たことは、その後私がキャリアを重ねていく上で大きな自信になりました。

Interview 02

これまでのキャリアでもっとも
思い出に残っている仕事を教えてください。

たくさんあってひとつには絞り切れないですね。1990年代から2000年初頭にかけて、銀行は大きな金融再編の波の真っ只中でした。当社も生き残りをかけて様々な可能性にチャレンジしており、私も様々な業務にチャレンジする機会をいただきました。今振り返ると、「相当ストレッチしたチャレンジ」と言っても過言ではないかもしれません。

例えば2005年に新設されたフロンティア戦略企画部に与えられたミッションは、要するに「何か新しい有望なビジネスを見つけなさい」ということ。ルーティン業務は皆無で、最初は何もわからず、どこから手をつけたらいいか途方に暮れました。それでも暗中模索する中でCO₂排出権ビジネス等を生み出し、一定の成果を生み出せたことは大きな財産になりました。自分にとって難しいと思ってもチャレンジすること、そしてその中で成功体験を得ることが、仕事には重要なことだと私は思います。

Interview 03

ご自身の成長を感じた
エピソードを教えてください。

2003年に出産し、育児休業明けの2004年に経営企画部に復職しました。担当したのはそれまで経験したことがない財務企画です。管理職なのに、最初はチーム内で飛び交う用語の意味さえ解りませんでした。子供はまだ0歳で手がかかるし、管理職としての責務も果たせない。もう絶望的な気分になりました。

それでも自作の単語帳やノートを作って勉強する等、自分なりにできることを懸命に進めていたある日、参加した管理職研修で“らせん階段理論”を教えてもらいました。らせん階段を上る時は同じ風景に見えるけれど、登り続ければ必ず高みにたどり着く。私はその言葉に救われ、自身もそうでありたいと、自分なりの努力を続けることができました。当社には部下が上司を評価する「360度評価」というものがあるのですが、当時の部下からの評価は「仕事はわかってないけど、とても頑張っている」とあって、そういう風に評価されたことが驚きでもあり有難いと思いました。このように、一歩一歩自分なりの努力をしてきたことが、今の成長に繋がっているのだと思います。

Interview 04

現在ご担当の、監査部の業務内容、
役割を教えてください。

企業活動のグローバル化や各国当局の規制強化、デジタル化等の急速な環境変化が進む中、組織のリスクを正しく認識し低減する仕組みを構築することが求められています。内部監査は組織的なリスク認識やコントロールの有効性を検証するため、第三者的立場から経営上の様々な活動の進み具合を検討・評価し、助言・提言および支援を行います。

当社においても、機能別再編や海外での戦略的買収等によりビジネスモデルの大きな変革期を迎えており、監査部ではこの環境変化に耐えうる企業風土の醸成や目標の達成に貢献するため、従来型のルールへの準拠性の検証に留まらず、ベストプラクティスな目線で有効性を検証することを目指し、高度化に取り組んでいます。

時には執行側が力を入れている取り組みについても、助言・提言を行いますが、相当の“覚悟”が必要です。その際には、事実に基づき、客観性・論理性を持って議論することが不可欠です。ただ、これは監査に限らず、社会人として仕事に取り組む際には、どんな場面にも求められることでしょう。私自身、例えば、異なる立場の他部署との議論や、年上の部下や経験豊富な部下と接する際等に、納得感ある合意形成を目指し根拠に基づいた正しいロジックで伝えるように心掛けてきました。

Interview 05

初の女性役員として成し遂げたい
と思っていることはありますか?

当社初の女性役員として、後進のロールモデルでありたいという思いはありますが、女性だから特別に何かを成し遂げたいという意識はありません。

ただ、女性活躍推進においては、アンコンシャスバイアスが課題となっているように、組織全体への浸透や実現に時間がかかるので、粘り強く取り組みたいと考えています。役員会議でも自身の体験も踏まえながら積極的に提言を行っていくつもりです。

会社には多くの方が働いており、それぞれの強みも家庭環境等も異なります。組織体として最大限のパワーを発揮するためには、性別や年齢、国籍に関わらず、全てのメンバーが最大限のチカラを発揮できるように環境整備することが重要と考えています。

私自身がそうであったように、経験のない業務の担当になったとしても、自分の強みを活かして仕事に取り組むことで、組織に対する貢献はできます。また、育児や介護で時間の制約があっても、例えばリモート環境を上手く活用し、優先順位をつけることで、不足部分をカバーできます。そのような取り組みをサポートできればと思います。

Interview 06

最後に、ご自身のキャリアを踏まえ、
就活生へのメッセージをお願いします。

私が就職に際して心に決めていたのは「経済的に独立する」ということでした。自分の人生を誰かに依存したりはしない。その思いでキャリアを重ねてきました。もちろん壁にぶつかり、「もう辞めたい」と心で泣き言を言ったこともあります。しかし、その度に乗り越えることができたのは、チャンスをいただき成果を残せたという成功体験があったからです。その意味で、若い人材にチャレンジする機会を与える当社の文化は、私にとってありがたいものでした。

全く知らない業務へのチャレンジには不安もあります。しかしアサインされたということは、その課題を解決する能力があると判断されたからですし、更なる成長を期待されたからです。新たなものへのチャレンジをチャンスと捉え、もがきながらやり遂げてください。その成功体験は自身のキャリアを重ねるうえで大きな自信になるはずです。