そもそも「信託」とは、人を信じて自分の財産を託すという行為のこと。その考え方のルーツは古く、古代エジプト人が書いた遺書の中に見られる。近代の信託制度の原型といわれているのは、一般的には中世イギリスの「ユース」と呼ばれる制度。封建領主たちの「没収法」を逃れるため、自分の死後、土地を教会に寄進したい人は信頼できる友人などにいったん土地を譲渡した。土地を譲り受けた友人は土地を耕して収益を上げ、それを教会に寄進した。これにより、直接教会に土地を寄進したことと同じ効果を得ようとしたのである。これが後に人と人の信頼を意味するトラストと呼ばれるようになった。11世紀から13世紀にかけての十字軍の遠征の際も、十字軍の兵士たちは家族のために信頼できる第三者に財産管理を依頼したという。
信託は委託者、受託者、受益者という三者関係で成り立っている。委託者が自分の信頼できる人(受託者)に財産(信託財産)を引き渡し、一定の目的(信託目的)に従い委託者本人または第三者(受益者)のために信託財産を管理・処分させる制度が「信託」である。
たとえば、従業員の退職金準備を目的とした年金信託を例にとると、会社等の事業主(委託者)が信託銀行(受託者)に積立金を預け(信託)、信託銀行(受託者)が退職者(受益者)に退職金を支給するためにその資金を運用・管理する仕組みになっている。信託銀行に積み立てをすることによって、万が一、会社等が倒産するようなことがあっても、従業員のための積立金は担保されることになる。

高齢化・少子化の進展や資産形成・運用ニーズの高まり、加速する資産証券化の流れ、年金制度改革など、わが国の社会構造は刻一刻と変化している。こうしたなか企業や個人はさまざまな課題に直面し、近年、これらの課題に「信託を利用した解決策」が貢献するケースが増加している。具体的には、三菱UFJ信託銀行のオリジナル信託商品である「パーソナルトラスト(生前贈与信託)」が典型的な事例としてあげられよう。この信託商品は、妻や子供など、大切な家族の将来のために経済的な後ろ盾を用意しておきたいといった要望に個別にお応えすることを目的として開発されたもので、信託期間、支払方法(受益者に対し○ヶ月毎に○○万円ずつ支払うなど)等、お客さまの多種多様な財産管理ニーズにオーダーメイドでお応えすることを可能とした。こうしたさまざまな社会的課題に対し信託的ソリューションを提供していく、そういう時代だからこそ信託の可能性は広がっているのだ。